月探査の国際ルールに署名　背景に“米中覇権争い”(2020年10月14日)

日本時間14日未明、日本やアメリカ、イギリスなど8カ国による月探査に関する国際的な枠組み『アルテミス合意』の署名式が行われました。月で採取した宇宙資源の平和的利用や、調査データの透明性の確保など、宇宙空間における国際ルールを作り、各国で協力していこうという内容です。この枠組みをもとに、2024年までに月面に再び人類を送り、月を探査しようというアメリカ主導の宇宙プロジェクト『アルテミス計画』が進められることになります。アルテミス計画では、月面に中継地点を築くことによって、さらに離れた火星探査の足掛かりにすることも考えられています。

文部科学省は、物資を運ぶ無人宇宙船の開発費などのため、来年度810億円の予算を求めています。政府は、2020年代後半にも日本人宇宙飛行士の月面到達を目指していて、現役飛行士からも期待の声が上がっています。
宇宙飛行士・野口聡一さん：「私もこのアルテミス合意を受けてですね、我々の活躍の場が、次はいよいよ月に広がっていくんだという思いで、次のミッションに向けてまた頑張りたいなと気持ちを引き締めているところです」

月の南極と北極では、地表から7センチほどの深さに氷が確認されていて、約数十億トンの水が存在すると言われています。水は、生活用水になるだけでなく、分解すれば、長期滞在に不可欠な酸素と、燃料として使える水素が生まれます。こうした資源が見つかった時、民間企業の権利が守られるのが、アルテミス合意の意義の1つです。東京都港区の宇宙開発ベンチャー企業『ispace』は、水資源の探査に手を挙げました。月に物資を運ぶ着陸船や探査車を開発しています。
『ispace』中村貴裕取締役COO：「宇宙条約では、民間企業の所有は明記されていないグレーな状態。アルテミス合意では、民間企業は採れた資源を所有して売買できる。グレーだったものがクリアになって、どんどん参画する企業が増えると思うし、この産業の発展にアクセルがようやく大きく踏まれた」

一方で、アルテミス合意には、宇宙開発をめぐる“中国包囲網”という側面があります。宇宙強国を掲げる中国は、2045年までに宇宙分野での世界1位を目指しています。すでに、人類で初めて月の裏側への着陸を成功させたほか、単独での宇宙ステーション建設や、火星探査計画も進めています。驚異的な速さで進む中国の宇宙進出に対し、アメリカの危機感は高まる一方です。
トランプ大統領：「アメリカに危害を加えるため、宇宙で最も優位な立場を狙う者たちよ。今後はそうはいかない」
アメリカは、2025年までに3兆円規模の予算を組んでアルテミス計画を進めようとしています。
[テレ朝ｎｅｗｓ] https://news.tv-asahi.co.jp

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