水問題で対立続く　県・ＪＲ・国は…　２０２０しずおか　リニア中央新幹線

シリーズでお伝えしている２０２０年・県内の展望。１月９日は、リニア中央新幹線です。大井川の水問題など対立が続く県とＪＲとの議論に国土交通省が参加する予定ですが、着地点は見えていません。それぞれ現状をどうとらえているでしょうか。
「トンネルか水か、二者択一を迫られている。どう両立させるか知恵を絞らなければいけない」（川勝平太知事）
　仕事始めの訓示で、川勝知事が力を込めたのはリニア問題の解決でした。
　リニア問題の本部長を務める難波副知事が、年の瀬に姿を見せたのは国土交通省です。事業を直轄する鉄道局を訪ね、「三者協議」にほかの省庁も参画するよう要請したのですが、反応は鈍いものでした。
「ゼロ回答ということはないんじゃないかと期待しているので、何らかの形で考え方をくみ取っていただける期待感はありますが、きょうの返事では否定的であった」（難波喬司副知事）
　リニア中央新幹線は大井川上流部の真下を走ります。工事によってトンネルへの湧き水が山梨や長野に一定期間流出する恐れがあるほか、南アルプスの自然環境に影響があると懸念されています。県とＪＲ東海との議論がこう着する中、国交省が本格的に動きました。２０１９年１０月、国交省の事務方トップが訪ね、国と県、ＪＲ東海による「三者協議」を提案しました。ただ県側は国交省だけではなく、環境省や農林水産省も交えて向き合うべきだと求めています。
「より専門性が高い、客観性なり、真実に近い議論ができればいいんじゃないか。極めて専門的なところで話をしているので。専門的知見がある人が入った方がいいという意味で申し上げてる」（難波喬司副知事）
　県の要望について国交省の江口審議官は厳しい見解を示します。
「我々が主務官庁として認可した。環境大臣も我々に意見したことから。うち（国交省）が交通整理役としてやります。もし必要に応じて専門的なコメント、意見が必要な場合は、関係省庁や専門家に知見も確認する」（国土交通省・江口秀二技術審議官）
　江口審議官は２０１９年、大井川の流域市町を回り、ＪＲ東海の説明不足を痛感しました。
「自分たちが利用していた水に影響が出るんじゃないかと懸念を持たれている。懸念に対して応えていく、それもわかりやすく対応していくことが必要だろう」（国土交通省・江口秀二技術審議官）
　リニア工事を巡っては、大井川の水が減るという懸念が最大の問題です。農業、生活を支える「命の水」ともいわれ、流域の理解が欠かせません。これまでＪＲ東海による地元への説明、交渉の窓口は県に一本化されていたため、直接説明する機会がありませんでした。
「（大井川流域）市町のご心配がなかなか解けない。（大井川の水問題について）丁寧に私たちの情報が伝わるように、これからはそういう機会を設けなければいけない」（ＪＲ東海・金子慎社長）
　２０２７年の品川－名古屋間の開業を目指すうえで、２０２０年は重要な１年となります。金子社長は年末の会見で、焦りの色を隠しませんでした。
「時間が経過したので、だんだんと状況が厳しくなっているのは確かですね。ですが開業の目標を変えることはありません」（ＪＲ東海・金子慎社長）
　一方、難波副知事は、目の前の課題を解決することが前進に繋がると考えます。
「着地点はいまの問題を解決すること、その先にある。落としどころを先に考えてやることではない。環境への影響、利水者への影響は妥協してという話ではない」（難波喬司副知事）
　まずは国を交えた議論がどう進められるのか、こう着した議論のカギを握ります。

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