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日本人が知らないUAEの火星探査機HOPE(ホープ)を解説

今年の7月に日本のロケットH2Aで打ち上げられるアラブ首長国連邦の火星探査機「ホープ」ですが、ほとんどの日本人がその実態を知らないと思うので、惑星科学分野の研究者が解説します。日本にとって貴重なお客さんですので、しっかり予習しておもてなししたいですね。

【目次】
0:00 知られざるUAEの火星探査
0:23 UAEの宇宙実績
0:44 ホープのミッション概要
1:05 MAVENの実質的な後継機
1:38 UAEが目論む野望
2:56 製品を海外に外注するスタイル
3:17 新興国と手を組むことが今後重要

【参考文献】
O. Sharaf et al. Emirates Mars Mission (EMM) 2020 Overview and Status. Ninth International Conference on Mars 2019.
https://ui.adsabs.harvard.edu/abs/2019LPICo2089.6058S/abstract

M. AlShamsi et al. SCIENTIFIC PAYLOAD OF THE EMIRATES MARS MISSION: EMIRATES EXPLORATION IMAGER (EXI)
http://www-mars.lmd.jussieu.fr/granada2017/abstracts/alshamsi_granada2017.pdf

E. Altunaiji et al. SCIENTIFIC PAYLOAD OF THE EMIRATES MARS MISSION:
EMIRATES MARS INFRARED SPECTROMETER (EMIRS) OVERVIEW
http://www-mars.lmd.jussieu.fr/granada2017/abstracts/altunaiji_granada2017.pdf

H. Almatroushi et al. SCIENTIFIC PAYLOAD OF THE EMIRATES MARS MISSION: EMIRATES MARS ULTRAVIOLET SPECTROMETER (EMUS) OVERVIEW.
http://www-mars.lmd.jussieu.fr/granada2017/abstracts/almatroushi_granada2017_EMUS.pdf

UAE Space Agency, Appendix – Details of Emirates Mars Mission.
https://www.multivu.com/players/English/7520951-uae-mission-to-mars/links/7520951-Details-Emirates-Mars-Mission.pdf

秋山演亮, 2019, UAEの進める宇宙開発計画の紹介と日本の戦略
https://note.com/pequod_crews/n/n5974b740d45a

The UAE is going to Mars. Here's the plan for its Hope orbiter.
https://www.space.com/united-arab-emirates-hope-mars-mission.html

UAEは日本の宇宙ビジネスパートナーとなり得るか
https://ksn-consulting.com/uae%E3%81%AF%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E5%AE%87%E5%AE%99%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B9%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%82%8A%E5%BE%97%E3%82%8B%E3%81%8B/

【連携サイト】
月探査情報ステーションーアル・アマル(al-Amal)
https://moonstation.jp/challenge/mars/exploration/al-amal
月探査情報ステーション様は、天文・惑星科学の研究者たちが運営する日本最大級の月・惑星科学ポータルサイトです。インターネット黎明期の1998年から活動されており、良質な記事を多数取り揃えております。今後とも、惑星科学チャンネルは日本の宇宙・惑星科学教育の普及に向けて、月探査情報ステーション様と連携していきます。

【画像素材】
Mohhamed Bin Rashid Space Centre, NASA/GSFC, JAXA, ABC News

【字幕全文】
今年の7月に、日本のH2Aロケットで打ち上げられる
アラブ首長国連邦初の火星探査機「ホープ」。

日本人のほとんどが知らないこのミッションに個人的に興味を持ったので、
集めた論文や学会発表に加えて、JAXAやNASAで探査に携わってきた
自分の経験をもとに情報を整理してみました。
その結果見えてきたのは、とあるアメリカの火星探査機の姿でした。

そもそもUAEがなんで火星探査を?と思っている人が多いでしょう。
UAEがこれまで打ち上げた衛星は、地球周回衛星がわずかに4機のみ。
およそ実績があるとは言えない国がいきなり深宇宙探査をやるというので、
関係者の間で大変驚きをもって受け止められました。

実はこの探査機の詳細を見ることで、ミッションの実態がわかります。

探査機の質量は1.5トンあり、日本の探査機に比べると大型です。
それに対してミッション機器はわずかに3個しか搭載されません。

内訳を見ると、マルチバンドカメラ、赤外分光器、
紫外分光器となっています。
主な観測対象は火星の下層大気。
火星の昼と夜で大気組成がどのように変動するのかを調べることが、
主な科学目標です。

実はこれ、2014年から火星を観測しているNASAの
火星探査機 MAVENがやり残した観測なのです。

しかも探査機の開発体制を見ると、
ミッション機器を開発しているのは コロラド大学や
カリフォルニア州立大学などで、MAVENのチームと全く一緒です。
探査機本体はアメリカでほぼ全て組み立てられ、
UAE側でやるのは探査機の最終的な総合試験だけです。

つまり、UAEは開発を外注することで手っ取り早く探査機を買い、
アメリカは探査機を売ることで、自分たちがやりたいサイエンスをやる、
というような、お互いがウィンウィンになるビジネスをしているのです。

なぜ、UAEはこのような探査計画を目論んだのでしょうか。
その裏には国家としての事情があります。

UAEと聞くとまず皆さん、石油を思い浮かべると思いますが、
実は連邦を構成する7つの首長国のうち、
石油が出るのはアブダビ首長国のみで、
ドバイなど他の首長国はほとんど石油が出ません。

そのためドバイの経済は金融、流通、観光で成り立っています。
そんなドバイが次に目指しているのが、宇宙開発を筆頭とする
科学技術分野でのブランド確立です。

ホープミッションのUAE側での中心的役割を担っているのが、
ドバイにあるムハンマド・ビン・ラシード宇宙センターです。

この研究センターの名前の由来になっているのが、UAE副大統領にして
ドバイ首長である、ムハンマド・ビン・ラシード氏です。
これまでエミレーツ航空の設立や、ブルジュ・ハリファの建設など、
多くの国家事業を主導してきました。

つまり実質的にホープはドバイが投資する宇宙ビジネスの一環なのです。

中東諸国で初めて火星探査を成し遂げることができれば、
ドバイが今後、科学技術立国として認知されるための
大きなブランドを確立することができます。

冒頭で説明した、
探査機の質量に対して搭載機器が少なすぎるという件にたいしては、
MAVENで既にやった観測はやる必要がないということもありますが、
少ない投資資金で、最大限の宣伝効果を得ようとする、
ドバイ側の思惑が大きいと考えられます。

このようなビジネスは、アップル社のやり方に似ていると言えるでしょう。
下請け企業も含めて、国内生産を重視する日本のメーカーと異なり、
アップルの製品は大部分が中国で製造されています。
しかしアップルは自分のブランドとして、
堂々と 米国製品として売っています。
ホープ・ミッションの実態はこれに近いと言えます。

今後こういったミッションは増えていくと予想されます。
アメリカやヨーロッパ、日本など宇宙探査を推進してきた
従来の伝統国はいずれも厳しい資金難に直面しています。

そんな状況で、なかなか売れないH2Aロケットを買ってくれたUAEは
日本にとって大事なお客さんです。

JAXAや内閣府の宇宙開発戦略推進事務局では
既に政府レベルでUAE宇宙庁と協力協定を結んでおり、
他国に遅れをとらないよう、日本のロケットや探査機、
さらには大学教育サービスに至るまで、売り込みを図っています。

経済力をつけてきた中東や南米、アフリカなどの新興国と
上手に手を組むことが、国内の科学界・産業界の振興に
つながっていくでしょう。

それでは今回もご視聴ありがとうございました。
面白かったという方は、ぜひチャンネル登録をお願いします。
皆さんのご支援が、次回の動画を作成する時の、大きな励みとなります。
内容についてご意見がある方は、コメント頂けると幸いです。
どうぞ、よろしくお願いします。

#惑星科学チャンネル #PlanetaryScienceChannel #行星科学频道

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16 мая 2020 г. 4:06:35
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