不妊の原因と検査②～PGT-A ファティリティクリニック東京 院長 小田原靖 先生【妊活ラジオ／アイジェノミクス】

ファティリティクリニック東京 院長の小田原 靖 先生による不妊の原因と検査のお話。
その第2回は、受精卵（胚）側の原因としてPGT-Aについて教えていただきます。

なかなか妊娠しなかったり、あるいは
残念な流産になってしまう時に原因は何でしょう？
という話を常にされます。

いろいろな原因が
当然ありうるわけですけれども、ただその中の7割は
受精卵自体の異常があって着床しない、あるいは流産になってしまう。

着床しないのと流産の違いというのは、
異常がある染色体の位置と情報量の違い。つまり、大きいいろんな遺伝子を持っている
染色体の異常であれば妊娠しないし、非常に小さい染色体の場合には
妊娠に至るけれども流産をしてしまうというのが多いのではないかと
患者さんにはお話をしています。

Q：私も不妊治療していたときに
流産の経験があるんですけども、しなくていい流産は
避けたいなと思うんですけれども、PGT-Aというのは当時そんなに
メジャーじゃなくて私も知らなかったんですが、PGT-Aについて教えてくださいますか？

受精卵というのは体外で培養しますと胚盤胞という着床する直前の状態まで
大体5日間で育ちます。その状態になりますと、
将来赤ちゃんになる部分と将来胎盤になる部分というのがはっきりと肉眼的に、顕微鏡下ですけども分かれて見ることができます。

そうすると、赤ちゃんになる部分を
傷つけることなく外側の胎盤になる部分の細胞を
だいたい5つくらい取り、それを遺伝子検査することで染色体の異常があるかどうかを
調べるという検査です。

これは国によっては制約なしに
できるところもあるんですけども、日本の場合にはまだこのPGT-Aが
始まって間もないということで、実際にどのくらい有効かということを
もう少し見ていこうよというのが今の日本産科婦人科学会の考え方でして、そういうことから現状ではPGT-Aができる
施設が限られています。

PGT-Aができる施設が
だいたい50施設くらい日本にございまして、さらにそれを受けられる方というのは体外受精を2回やって
残念ながらうまくいかない方、あるいは2回流産を繰り返している方、そういう方に対してこの検査が
有効かどうかを見ていこうというのが現状の学会のスタンスで、結果を見つつその適用を広げていこう
というところになっています。

非常に有効な検査なんですけども、
胚を取って検査するということはやはり費用がかかるんですね。1つの胚あたり
10万円くらいかかってしまいます。保険診療の中でこのPGT-Aは
まだ先進医療に入っておりませんので保険診療で受けることができません。

もしPGT-Aを受けるということになると、全てが自費になってしまうんです。今、保険診療で体外受精ってだいたい
10〜20万円で受けられる時代になりました。それが40～50万になって、さらに受精卵1個あたり
10万円かけるということになると、場合によっては1回の治療で
100万円近くかかってしまうんですね。

それで100%うまくいけば
良いんですけれども、もしその受精卵に
異常があるものしか見つからなければ結局移植をする胚が
見つからないということで全く無駄になってしまうし、正常と診断された受精卵を戻しても
成功率は残念ながら100%ではなくて、当院でだいたい65％くらいの妊娠率、10%ぐらいの流産率がございますので、治療をそこに進めるというのもなかなか難しいところなのかなというのが現状。

Q：PGT-Aが先進医療としてこれからどうなっていくのか、また将来の保険適用について期待する声は
もちろん大きいんですけれども、これからについて先生のお考えは？

現状でPGT-Aは先進医療のBという
カテゴリーで今研究が進んでおります。いくつかの大学、東大とか阪大、
あるいは徳島大学とかがメインになって、そこから我々のような一般の
不妊の体外受精の治療施設に症例数が何件か振り分けられて
その効果を見るというのが本格的にはこの秋からですね。

だいたい200例くらいまずやってみよう
というのが今のところです。その効果が出れば
何とか先進医療(A)として、今度は他の先進医療と同じように
できるようになるかというのが今の現状。

実際に先進医療になるにはまだ
ちょっと時間はかかるし、保険ということになると
まだ先になるのかなと思うんですが、個人的にはこの治療は
非常に有効でですね。

これはうちのデータなんですけども、不妊治療が保険になってから
PGT-Aをする方が激減しました。それによって当院の40～44歳の方の
胚移植あたりの妊娠率って保険前の2021年は42%あったんです。それなりにPGT-Aの方が多かったから。

それが2022年は26%なんですね。PGT-Aを受ける受けないに
関わってるので
明らかに有効性はあると思っているので、とにかく早く負担なくできるようになればと
切に願っています。
ファティリティクリニック東京
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この動画は、エフエム西東京で放送した「妊活ラジオ」の内容をビデオアーカイブとして配信しています。
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