吉田町工場火災　なぜ4人は巻き込まれた？（静岡県）

7月5日、吉田町で起きた工場火災では、警察官をはじめ4人が命を落としました。なぜ、警察官たちは巻き込まれたのでしょうか。工場火災、さらに火の脅威を検証しました。

＜伊豆川洋輔記者＞「建物内からは火がものすごい勢いであがっているのがわかります」
　5日午前1時半ごろ、吉田町川尻のレック静岡第二工場で火災が起きました。消防車27台が出動し、100人近くの消防隊員が消火にあたるほどの火の勢いでした。
＜目撃した人＞「真っ黒い煙、赤い火は見えなかった」「ドーンという音がしたんで、何だろうと思ってました。煙が最初出て、中から人が出たのは見えました」
　火は工場兼倉庫１棟を全焼し、約30時間にわたり燃え続けました。この火事で、火元などを確認するために、建物の中に入った警察官1人と消防隊員とみられる3人の遺体が見つかりました。
＜田辺信宏静岡市長＞「家族の皆様の心情を察すると、本当に悔やんでも悔やみきれない痛恨の極みの気持ちでございます」
＜静岡市消防局　海野雅夫局長＞「3名とも非常に熱心に仕事をする隊員で、真面目で正義感が強い隊員でありました」
　静岡市によりますと、4人が建物の中に入った時点では炎は見えず、煙も少ない状態でした。その後、大きな音とともに黒煙と熱気が噴き出したといいます。特に1階北側の損傷が激しく、そこで何らかの爆発的な延焼が起こり、2階にいた4人が取り残された可能性があるということです。今回の火災で、起きたと考えられるのが爆発的な延焼です。
＜静岡市消防局　海野雅夫局長＞「建物火災において火勢が爆発的に大きくなる状況はいくつかの原因が考えられます。例えばバックドラフトと呼ばれるような形。もう一つフラッシュオーバーという状況」
　これは火災の実験映像です。「バックドラフト」とは、気密性の高い室内での火災で空気が少なくなり一旦、火が弱まった時に新たに新鮮な空気が入ると一気に爆発を起こす現象です。一方、「フラッシュオーバー」は火災で室内が高温になった時に可燃性のガスが発生し、そこに引火して爆発的な延焼を引き起こすものです。専門家は、工場という特殊な環境がこれらの現象を引き起こした疑いを指摘します。
＜静岡理工科大学　十朱寧教授＞「倉庫にある物質の表面からガスが発生して、それが可燃性ガスになりやすい。空気の混合比でちょっとした火花で全体的に爆発する状況になった」
　十朱教授によりますと、工場の中にあったスポンジや洗剤の原料の粉などが熱せられることで可燃性ガスを発生させます。ガスが火に反応することで爆発的な延焼が起きた可能性があるということです。
＜十朱寧教授＞「倉庫にどういうものが置いてあるのか事前にキャッチしないと消火活動やるには危険」
　4人もの命を奪った大惨事を繰り返さないために静岡市消防局では、専門のチームを作って火災の原因と爆発の起きた理由を究明するとしています。
　今回現場となった工場兼倉庫では、約2年前にも火災がありました。工場近くに住む人は、繰り返される火災に不安を感じ、反省を生かしてほしいと話していました。この工場を管理する「レック」は、7日記者会見を開くということです。なぜ、火災は再び起きたのか、原因の究明が待たれます。

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