Загрузка страницы

医師と患者とタイプライターになれなくて  記事 西山信夫 

 ダウンロードできないと言われてきたwindows ムービーメーカー をやっと入手できたと思ったが、タイプライター的入力ができず糠喜びに終わった。タイプライターで印字しているようにデモする機能が搭載されていたのはさらに古いビスタの時代だったかと思う。世の中新しくなって良くなるとはかぎらない。ラベル屋さんも10より9のほうがはるかに優れている。睡眠導入剤のアルプラゾラムだって中心の溝が深く二つ折れしやすい先発のソラナックスに利便性とデザインで負けている。紙面の都合で多くは語れないが、バージョン云々の悪例の極みが小津映画の新音声版だろう。サイレントがいいとは云わないが、音声が水と油のように作品と分離しなじまない。Bingのチャットは成長している。こいつと熱海富士と憲法第二十五条ぐらいだろう、確実にバージョンアップしてきているのは。

 佐和子に附き添って行った明治橋泌尿器科の診察は「コップの水」論争から始まっていた。
「コップに一杯の水が尿だったら」K医師は云った。
「ほかせばすぐには溜まりません。溜まるまでに時間がかかり、おのずとトイレに行く回数が減るというものです。このイメージをもとに発案され製品化されたのがツムラの漢方薬-チョレイトウだと理解しています」
「でもこれは健康な人の排泄のプロセスでしょう。騙されて彼女は一か月飲みつづけましたが、実際には少ししか出ない。健康な人のように膀胱が強くないので一杯にまで溜めることができないからです。むしろ薬は過活動を促進して回数が増えます。キーになってるのは膀胱、膀胱の機能を改善してくれる薬はないんですか」
「ないです。泌尿器科ではなく、リハビリテーション科に行って相談してみたらどうでしょう」
「ないんじゃなくて、効かないということでしょう。ツムラのような膀胱や腰痛の改善を謳った広告は巷に氾濫していますから。家一軒プレゼント附きの認可が多いのでしょうか、よく認可されたものだと感心しています。ロキソニンsとかいう鎮痛剤があるんです。禁忌事項の中に高齢とか心臓病が入っていて高齢者には適していないせいか泌尿科が扱う薬としての認可はされていません。腎臓の血流を遮断して一時的に尿の生産を止めるという夢のような、いわばもう一つの有効活用法として山梨大学の教授が提唱しているんですが。月一、二回のここぞという時に飲むだけなら大丈夫と思うんですが、処方箋なしでも買えますしね」
「エビデンスレベルが高くないようですよ」
「ツムラは高いんですか。(笑い)とある薬屋が哂いながら云ってますよ、尿のトラブルに効く薬はないよと。認可するのは厚生省だから訴訟を起こされても心配ない。心も痛まない。一々心を痛めてたら薬屋はやっていけないし、医師も病院には残れない。この患者の妹だって神戸に住んでるんですが、効かないと溢しつつ惰性で同じ薬を何十年も飲んでいますよ。建築基準にはきびしいが、国も人もなぜか薬にはものわかりがいい。でも彼女は違いますよ。藁を掴む思いで病院に来てるんですよ。そういう人をリハビリテーションに行けと云うんですか、この齢で膀胱を強化できると思いますか。え、薬は出さない?」
 医師は処方箋を書かない決断を下した。年増の看護師が私に好意をもった動きをしていた。興奮して何時私が倒れてもいいように背中に手を回してきているのだ。だが葉は枯れてきていても私の枝は少年のようにしなやかである。私がイブモンタンになれず、「枯葉」が巧く歌えないのはそのせいだろう。
「葉をださない、いや薬を出さない理由を訊いていいですか」
「この方が小さな声ですけど」頭に病気があると断っているのに、医師は佐和子の方ばかり見ていた。「薬はいらないと云いました。あなただってチョレイトウは効かないと批判したじゃないですか」
「云いましたが、薬はチョレイトウだけじゃないでしょう」
 一緒になって抗議して欲しかった佐和子は壁の方を向いていた。この時彼女は外からの指令を聴き取ろうとしているのだった。後でわかったことだが、K町にSという名医がいる。いい薬もあるので早々に退散しなさいという指令だったそうだ。この大事なところで幻聴がでたのである。そうとも知らず私は佐和子と医師、二人を敵に回したような気分に陥っていた。家ではトイレに行きたくてもすぐには立てなかった。體を揺すって、長い時には四十九分も我慢する。矛盾してるように見えるが、迂闊に立つと洩れるのでタイミングを見計らっているのである。へんな癖がついて今では脊椎が曲がってきたように見える。外は外で夏でも膀胱は三十分ともたない。二キロ先の病院までもうすぐのところを断念し、ひきかえした日もある。臀部が黒く光っていた。こんな辛い思いをし、藁をも掴む思いで来院したのである。私も帰宅してから紙の上で応酬していた。
「彼女は薬がいらないのではなく、あなたのくれる薬を必要としないんです。最低の医師と最低の患者にタッグを組まれたら勝てませんよと一瞬思いましたが、どうしてこの患者賢いです。あなたに処方箋書かれてたらごっそりカネを溝(どぶ)に捨るところでした」
 外へ出るともうすぐ十一月だというのに日傘をさしている女もいた。九州場所の触れ太鼓はまだ聞こえて来ないが、横綱照ノ富士の休場は早々とニュースで知っていた。(完)

Видео 医師と患者とタイプライターになれなくて  記事 西山信夫  канала 西山信夫
Показать
Комментарии отсутствуют
Введите заголовок:

Введите адрес ссылки:

Введите адрес видео с YouTube:

Зарегистрируйтесь или войдите с
Информация о видео
8 декабря 2023 г. 2:04:50
00:01:26
Яндекс.Метрика