アリス・ヘルツ＝ゾマー | すべてが授か卿です (2009年のドキュメンタリー)

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アリス.ゾンマー.ヘルツは、あの災難から逃れる ことのできた数少ない一人である。彼女は高い見 識を持ち、また彼女と会った世界各地の何万もの 人は、人生で2度と経験できぬであろうほどの感 動を彼女から受けている。彼女を知ることになっ た人は大きな感動と活力を与えられるのだ。私は 彼女と知己を得た30年前から、それを何度も何度 も目の当たりにしてきた。
ドイツのテレビ局XV011から、映画「评6 出6
1^111」製作の打診があったとき、私がアリス.ゾン マーをよく知っていなければ必ずやその話を断っ ていただろう。だが、作品の中でアリスの体験を 紐解く際に、彼女の見識と優美さの助けがあれば 、この、ほぼ不可能と思える仕事も何とかこなせ るのでは、と私の映画監督としての勘が働いたの である。
勘は正しかった。作品は多くの国際的賞を獲得した。ただし、それらは間違いなくジ ジ-ゾンマーのお陰である。謙遜しているわけではない。その映画製作に用いられた 我々の技術は確かに大きな要因ではあった。だが、作品の持つ内面の強さ、そして、 この作品の質をこれほどに高めた要素は、私が見た限り、我々の98歳のスターの持つ 力であった。
この作品を撮影する際、ジジ.ゾンマーを対象にして、あえて、この作品ではとても 使い切れないほど余分にカメラを回した。いつの日か、彼女だけを取り上げた映画を 製作したいと考えたからだ。
何年もの間、私はその考えを胸に秘めてきたのだが、ジジの106歳の誕生日が6週間 後に迫ったある日、彼女が私に言った、「年を取るというのは病気みたいなものね。 私は以前の私と違っている。体が以前のように言うことをきかないもの」。
その言葉が私の背中を押した。彼女が98歳の時に撮った材料を利用し、迫り来る誕生 日までに彼女に捧げる作品を製作することが私の絶対の目標となった。
そして目標の日、2009年11月26日の10日前に作品は完成した。
彼女に我々の労作を見せたとき、彼女は言った、「いいわね。不必要な部分は何もな いわ。きっと大変な仕事だったでしよう」。さらに、彼女は自身の言葉と、流れる音 楽との融合がとても気に入ったと言った。
そうです、親愛なるジジ。大変な仕事でしたが、作業のすべての瞬間が素晴らしい時 間でもありました。
天の配剤か、本やレコード、あるいはコンサートなどでは不可能な、世界の芸術家が みまかった後でも、彼らが、あたかも生きているような記録を残す映画製作という仕 事に私は一生を捧げてきた。そのきっかけは、きわめて珍しい偶然のいたずらであっ た：最初の偶然は、才能豊かで活力のある新世代の若き音楽家たちの出現である。そ して次の偶然は、軽量で静かな新しい16ミリ映画カメラの出現であった。それらのお 陰で、かつてなかった種類の映画の製作が可能となり、その結果、このジャンルの持 つ魅力がゆるぎないものとして受け入れられることになったからである。
ジジ.ゾンマーは、人々の記憶に残すに値するアーティストである。私はアリス‘ゾン マー.ヘルツの精神、優美さ、真摯さ、そして彼女の音楽を、生命を保ったまま世界 に残すために、少しでも寄与する機会を与えられたことに深く感謝し、また誇りに思 う次第である。

クリストファ一.ヌーペン2009年11月16日

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